新宿駅の標識が苦手な話

f:id:reporters3:20171019231826j:plain

「こ#$%ト*#$%’で(‘&%$#」

なにを言っているのかよくわからないが、子どもらしくあるべきだと思った私は、「はい!」と言ったら、大きなスクリーンの前に連れていかれたことがある。

今思い出して見ると、ゲームのイベントだったようで、スクリーンを前に大きなステージが作られ、一番端にあるPlaystationのコントローラーを握らされた。

握らされたタイミングで母が現れ、すぐに私の腕を掴んでステージから下ろし、逃げるようにしてステージを後にした。

 

18年前。

私がまだ11歳の頃である。新宿駅で、道に迷っていた。

矢印に沿って歩いてもたどり着けない目的地。そそくさに歩きぬける、特徴のない見た目をした人々。屋台のような、でも、食べ物を売っている様子がないお店。ー携帯電話をタダで配っているようだったー

ビックカメラに行こうという父の提案で、それが何かはわからないが、数年ぶりの両親とのお出かけにワクワクして、ついて行った時のことだった。

当時は埼玉県に住んでいたため、埼京線新宿駅へ。何口店なのか記憶に定かでないが、ビックカメラに向かうべく、家族みんなで、目的の出口が書いてある駅内表示を目印に歩いた。

しかし、一向に着くはずもなく、言葉がうまくわからず聞くこともできない私たち3人は、同じところを何度も通りすぎることとなった。ーわからない人には冗談と思われるかもしれないが、新宿駅は標識通り歩いても辿り着けないのだー

多すぎる標識、多すぎる自動販売機がダメ押しとなった。

気がついたら私は一人でよくわからないところに座り込み、床を歩く人々の靴を見ていた。

今思い出すと、床には、「立ち止まらずお進みください」と書かれていたようだった。

親を見つけられないと家に帰れず、死んでしまうため、腰を上げてウロウロし始めた。

泣くなんてとんでもない。一人でいるというだけのことに、泣く余地などないからだ。

叫ぶなんてとんでもない。どんなお願いをしたらこの無機質な世界で救いがあるのかわからないからだ。

膝小僧から少し痛みを感じた頃、爽やかな男の人がよくわからないことを言いながら声をかけてきた

その声で子どものふりができた私は、無事、母に腕を引っ張られることとなったのだった。

今でも新宿駅の標識をまっすぐ見ることができないし、見てもよくわからない。

しかし、どこを指しているのかよくわからない標識を見ていると、当時のことだけは鮮明に思い返すことができるのだ。